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新型コロナウイルス感染症 緊急事態宣言が解除されました

2020.6.1
循環器内科 大木貴博

【これまでの新型コロナウイルス感染症の経緯】

令和2年2月頃から本格的に流行の波が押し寄せてきた新型コロナウイルス感染症ですが、4月には全国的な感染ピークを迎え、その後徐々に新規感染患者数の減少が見られ、この度5月25日には政府から緊急事態宣言の解除が告示されました。この間全世界において新型コロナウイルスに関する膨大な数の研究報告がなされ、少しずつこのウイルスの特性がわかってきました。ただしわかっている明らかな真実は未だ限定的であり、その全体像は不明なままです。医師によっても見解が異なるところが多々あります。今後の見通しがどうなっていくのか、百年に1度と言われている大災害ですから、しっかりと注視する必要があります。

【新型コロナウイルス感染症のポイント】

まだまだわかっていないことが多い中、これまで生じた事実から、新型コロナウイルス感染症の重要なポイントはたった三つです。
1)感染力が強く、空気感染のような場合もある
2)症状がない不顕性感染者が多い
3)治り難く、重症化し、死亡する例も多い
以上のように、かかりやすく治り難く、それでいて誰が感染しているかわからないという点が、これまでの通常の感染症とは格段に違うところです。

【緊急事態宣言発出の経緯】

ひとつのウイルス感染症にかかったとして、2週間でそのウイルスが治療や免疫の力で完全に死滅すると仮定した場合、もしその人が2週間、全く誰にも会いもせず接触もせず、触ったものが他の人に触れることが絶対ないような状況、つまり完璧な隔離が行われた場合、その感染症が他の人にうつるということは絶対にありません。ある一定の集団が感染した場合でも、その集団を完璧に隔離すれば、全体に感染が広まることはありません。そして今回の新型コロナウイルス感染症のように、誰が感染していて誰が感染していないかわからないときは、全員が感染している可能性があるとして個々人全員を個別に完璧に隔離すれば、感染していない人にうつることはありません。ところが老若男女がいる世の中、高齢者や幼少者は独りでは生きていくことができませんから、そのような完全隔離状態は作ることができません。それでも完璧な隔離状態に少しでも近づけるように、感染が個人、あるいは家族単位程度の小さな集団で済むように、令和2年4月緊急事態宣言がなされ、ほとんどの国民が自粛生活に入りました。過去のペストやスペイン風邪の際にも同様な施策がとられました。しかし人間の社会生活において100%の完璧な隔離というものはできず、たとえ90%人の動きが抑制できたとしても、理論上、ウイルスが完全に根絶させることはできません。そしてウイルスがわずかでも残って増殖することができたら、必ずまた感染流行の波がやってくるのです。そして完璧な隔離に近い隔離を目指すほど、経済的、社会的影響が大きくなります。新型コロナウイルス感染症では感染力が強いために隔離の厳格さが求められますし、不顕性感染が多いために効率的な隔離が困難で、また、治り難いために隔離の期間が長くなります。これまでの感染症の中でも最も深刻な経済的混乱、政治的・社会的混乱が生じ兼ねません。

【緊急事態宣言解除】

誰もが安心して生活できる状態になるには、新規の感染者が長期に渡ってゼロになることが必要ですが、今回は長期の自粛生活による経済的ダメージが非常に大きく、医学的根拠よりも社会的根拠を優先せざるを得なくなりました。ウイルスは未だ多くヒトの体内で増殖し続けています。自粛解除をすればウイルスは増えるけれども生活は楽になり、自粛をすればウイルスは減るものの生活が困難になります。この度の緊急事態宣言解除によりおそらくウイルスは再び増えます。すなわち再び医療資源の需要が高まります。医療需要が医療供給を上回れば医療崩壊します。医療崩壊すると医療供給はさらに縮小し、供給が増大し、指数関数的に医療崩壊が進行します。それを防ぐために医療体制を整備して医療供給を増強させ、自粛隔離により医療需要を減少させます。それによりウイルスは再び減少に転じます。その繰り返しが行われることは確実なのです。

【問題の解決策】

解決する方法は、たったの三つです。
1)感染力が強く、空気感染のような場合もあるのだから、感染しないように生活の中で極力感染しないように気を付ける=感染しないようにする
2)症状がない不顕性感染者が多いのだから、症状がなくても誰が感染しているのか把握する=徹底的に検査する
3)治り難く、重症化し、死亡する例も多いのだから、有効な治療法を確立させる、治療薬を開発する
しかし、2)の徹底的に検査する体制を整えるのには年単位の時間を要しますし、今のところ確かな検査法さえ定まっていません。3)の治療に関しては、幸い日本では医療提供がかなり迅速に行われる体制が整備されています。重症者の死亡率もとても低くなっています。残る課題は治療薬ですが、開発には相当の年月を要します。したがって今私達ができることは1)の感染予防だけなのです。感染予防を目的としたワクチン開発にも長時間が必要ですので、今現在できることとして、個々人で自分の身を守っていくことが唯一の最善策です。

【緊急事態宣言解除後の生活】

新型コロナウイルスは今も確かに存在し続けています。そして自粛解除すると感染が拡大します。緊急事態宣言解除後に活動範囲を広げた人たちによる感染の波はまさにこれからやってきます。そして海外からの人の流入が始まると、その約半月後に大きな感染の波がやってきます。その波は現在の海外の状況を見ると、非常に大きな津波になるかも知れません。津波に備えて避難するつもりで、危険な場所に行かないことが必要です。密閉された空間に長時間滞在することは危険です。マスクをしていればどこにいても大丈夫というのは錯覚です。とにかくリスクのある空間を避けることが重要です。ウイルス量の多い空間にいると、短時間でも感染する可能性が高まると考えた方がよいと思いますが、逆にウイルス量が少ない場所であればある程度の時間は滞在可能なのかも知れません。今後長期にわたってこまめに行動に気を配りながら、自粛と解禁を繰り返すことになりますが、決してあきらめず、自粛疲れすることなく、覚悟を決めて戦いましょう。

【新型コロナウイルス感染症の顛末】

あのスペイン風邪も数年後には流行の波が去って行きました。おそらく今回の新型コロナウイルス感染症も、数年後には去って行くでしょう。それまでいくつもの感染の波がやってきますが、当科外来では当面の間、どのように感染の波が推移していくのか注意深く見守っていく必要がある間は、これまでと同じ体制で診療を行って参りたいと考えています。ご不自由を感じられることも多いかと存じますが、今しばらく、ご迷惑、ご不便をおかけすることをお詫び申し上げます。循環器疾患は思わぬ急変をすることがありますので、症状に少しでも変化がある場合、多少なりとも気にかかることがある場合などは、ご遠慮なく、躊躇することなくお申し出下さい。